上顎前突症(出っ歯)、下顎前突症(しゃくれ・受け口)、顔の左右非対称、下顎後退症。
これらは歯や顎の異常によって起こる顎変形症の症状です。根本的な治療が難しいと言われる顎変形症ですが、近年知られてきている有効な治療法があります。
それが、今回紹介するサージェリーファーストです。「顎変形症かもしれない」と悩んでいる人は、サージェリーファーストについて、ぜひ知っておいてください。
サージェリーファーストはどんな治療法?
サージェリーファーストは顎変形症の治療に特化した治療法です。歯や顎の治療というと矯正治療を思い浮かべる人が多いと思います。サージェリーファーストは、この矯正治療と外科手術を組み合わせた治療法です。
詳しくは次の項目で紹介しますが、通常の矯正治療よりも、確実かつ大きく顔の形を変えられるなどのメリットがあります。
名前の由来は、はじめに(first)手術(surgery)を行う、ことから来ています。まず顎のズレを改善してから矯正を行う治療法です。例えば、上顎前突症(出っ歯)であれば、はじめに上顎の骨を切り取る手術を行います。その後に矯正装置を取り付けて矯正治療に入り、徐々に出っ歯を改善していく、という流れです。
通常、顎変形症の手術をする場合は、矯正治療をした後に手術をしますが、その逆になります。では、こうした一般的な顎変形症の手術や矯正治療ではなく、なぜサージェリーファーストが勧められるケースがあるのでしょうか。
それはサージェリーファーストに、矯正治療にはないメリットがあるためです。
サージェリーファースト 3つのメリット
歯にかかる負担が少ない
サージェリーファーストは、手術で顎骨の位置を改善した上で、矯正を開始する治療です。つまり矯正開始時点では、より適切な位置から歯を動かせることになります。これは、手術前に不適切な位置から矯正をする場合に比べて、歯にかかる負担を軽減できるというメリットがあります。負担が少ないことは、痛み、違和感、かみ合わせの不具合といった、矯正中に日常生活に起こり得るリスクを軽減することができます。
はじめに顔の形を変えられる
矯正の後に手術をする通常の治療に比べて「変化を感じられる時期が早い」という点も人によってはメリットでしょう。先に手術をして顎のズレを改善するため、すぐに治療の成果を実感できます。はじめに見た目が変わることで、矯正治療に対する不安が少なくなるという人も多いです。
治療期間が短い
一般的な顎変形症の治療よりも、治療期間を短縮できる可能性があります。長くて2年程度かかる顎変形症の治療ですが、サージェリーファーストではその半分程度の期間で済むこともあります。
矯正装置には、審美性(見た目の美しさ)が悪いというデメリットがあります。見た目が気になることで矯正治療を避けてきた人にとって、治療期間が短いというのは、大きなメリットでしょう。
サージェリーファーストのデメリット
顎変形症と診断された場合、治療には保険が適用されます。しかしサージェリーファーストで治療を行う場合は、保険適用外となります。つまり全額自己負担です。この点がサージェリーファーストのデメリットです。
保険適用での顎変形症の治療は、入院費などを含めて40〜70万円程度です。(細かくは症例によって異なります)一方、サージェリーファーストの場合は150〜250万円ほどかかります。
サージェリーファーストを選ぶ際は、先に挙げた3つのメリットと費用のデメリット両面を見て、医師と相談しながら決めることが大切です。
サージェリーファーストを検討している人へ
歯や顎の病院・クリニックの中には、サージェリーファーストを行なっていないところもあります。治療には、医師の高度な技術が必要となるためです。メリットに魅力を感じ、「サージェリーファーストで治療したい!」と思った人は、どの病院でも受けられるわけではないということは知っておきましょう。